相続放棄と限定承認の違い
1 相続放棄と限定承認の違い
どちらも、相続が発生した場合に、負債があるときに選択するか検討すべき手続きとなります。
その点では同じといえますが、法律面、税金面では違いがありますので、以下、説明をします。
2 法律・税金の違い
⑴ 法律上の効果の違い
- ア 相続放棄
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相続放棄は、被相続人のプラスの財産、マイナスの財産、すべての権利義務を一切承継しないという手続きとなります。
期限内に家庭裁判所に対して手続きを行うことで、「最初から」相続人ではなかったものとみなされることになります。
- イ 限定承認
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限定承認は、あくまでも「プラスの財産の限度」で負債を相続するという手続きです。
結果として、プラスの財産がマイナスの財産よりも多ければ、負債を返済したうえで財産を引き継ぐことができますし、マイナスの財産の方がプラスの財産よりも多い場合は、プラスの財産を引き継ぐことはできませんが、マイナスの財産を引き継ぐこともありません。
⑵ 税金面での違い
- ア 相続放棄
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相続放棄の場合は、「最初から」相続人ではなかったものとみなされますので、相続税はかかりません。
なお、法律上、「最初から相続人ではない」ことになりますので、相続税の基礎控除額を計算する際に、人数に含めないように誤解されがちですが、基礎控除額の計算においては一人とカウントしますので、その点はご注意ください。
- イ 限定承認
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限定承認を行う場合は、所得税が発生するケースがありますので注意が必要です。
限定承認を行うと、被相続人の財産を相続人へ時価で売却したものとみなされます。
そのため、相続財産のなかに不動産がある場合は、含み益に課税されることになります。
例えば、被相続人が3000万円で取得した土地の相続時の時価が5000万円の場合は、2000万円に対して所得税がかかることになります。
不動産を実際に売却したわけでもないにもかかわらず、所得税が発生しますので、納税資金に苦慮する可能性もありえます。


















